いちごのプランターの冬越しで検索された方は、初心者でも失敗を減らすために準備する物や寒さ対策、水やりと肥料、温度管理の考え方を知りたいはずです。
冬の途中で株が枯れるのではと不安になったり、北海道のように雪が多い地域での不織布やわらの使い方、葉が黄色くなる原因の切り分けにも悩みやすいでしょう。
この記事では、こうした疑問に順を追って応え、春の収穫につなげる実践手順をわかりやすく整理します。
寒さ対策と不織布やわらの正しい使い方がわかる
冬季の水やりや肥料の量とタイミングを把握できる
枯れる兆候や葉が黄色くなる原因への対処を学べる
いちごのプランター冬越しの基本

- 初心者向け準備する物の確認
- 不織布を使った寒さ対策の方法
- 冬季の水やりの注意点
- 冬に与える肥料のポイント
- 適切な温度管理の目安
初心者向け準備する物の確認
いちごをプランターで冬越しさせる際は、事前準備がその後の生育安定に大きく影響する。特に冬季は気温の低下や日照時間の減少により、植物体の代謝活動が緩やかになるため、環境管理を適切に行うことが重要となる。
農研機構の栽培研究においても、冬期のいちご栽培では根圏環境の安定性が株の健全性に直結することが報告されている。(出典:農研機構 野菜花き研究部門)
まずプランターは、根の成長を妨げない深さが必要で、一般的に高さ25〜30cm以上が望ましいとされる。底面の排水穴は複数あるものが適しており、水分が滞留しない構造であることが重要である。
受け皿は水管理を容易にする反面、過剰な滞水の要因となるため、冬季は基本的に取り外し、鉢底からの余分な水を逃がす形で管理する。
使用する培養土は、通気性と保水性のバランスが取れた野菜用培養土が扱いやすい。土壌が過度に締まると根傷みを招き、逆に軽すぎると水切れが起こりやすくなるため、構造と排水特性が安定した市販配合土が望ましい。必要に応じて、軽石やパーライトを一割程度混ぜることで、排水性と通気性を改善できる。
冬越し準備に必要となる主な資材は以下に整理できる。
| 資材・道具 | 主な役割 | 使用タイミング |
|---|---|---|
| 不織布 | 霜害防止・保温・風防 | 霜予報時、夜間~早朝 |
| わら・マルチ材 | 根圏の断熱、乾燥抑制 | 初冬の冷え込み前 |
| 温湿度計 | 温湿度変化の把握 | 通年、特に寒波接近時 |
| 剪定バサミ | 病葉や古葉の衛生除去 | 晴れた日の午前中 |
| 殺菌/殺虫剤 | 病害虫の初期対応 | 症状発生時に正規量で使用 |
苗は、クラウンと呼ばれる株元が引き締まり、葉色が均一で厚みがあるものが良品とされる。
葉に黒斑や黄化が見られる場合、病害の兆候または栄養バランス不良の可能性があるため、選抜の段階で除外することが望ましい。
古葉や傷んだ葉は病原菌の侵入口となり得るため、植え付け前に除去し、衛生性を確保することで、冬期管理が安定する。
これらを初期段階で整えておくことにより、寒波が突然訪れた際にも慌てず対処でき、株のストレスを最小限に抑えることが可能となる。
不織布を使った寒さ対策の方法
不織布は、プランター栽培における冬季の防寒資材として広く利用されている。透光性を保ちながら保温効果を得られるため、日中の光合成を阻害しにくい点が特徴である。
不織布の保温効果は、外気と株の周囲にわずかな空気層を形成することで働く。この空気層が熱の移動を緩和し、夜間の放射冷却による急激な気温低下を防ぐ。
不織布を株に直接接触させると、葉が圧迫され水分が停滞し、病害発生の原因となり得る。そのため、支柱やワイヤー弓を設け、株全体をふんわりと覆うように設置することが重要である。
また、風が強い地域では、不織布がばたついて破れやすいため、園芸クリップや洗濯ばさみを用いてしっかりと固定する。
複層構造にする場合は、外側に防風ネット、内側に不織布を配置すると、風圧低減と保温効果を同時に得られる。
日中に気温が上昇する場合は、蒸れを防ぐために一時的に開放し、通気を確保することが適切である。
特に冬期は日中と夜間の温度差が大きく、過度な昇温が葉の軟弱化を招くため、開閉の判断が管理の要点となる。
冬季の水やりの注意点

冬季は気温が低下し蒸散量が減るため、夏季と同量の灌水は必要とされない。しかし、乾燥が進みすぎると細根が損傷し、春の立ち上がりの生育に遅れが生じやすい。
水やりは土壌表面が乾燥したことを確認してから行う方法が基本である。特にプランターでは土壌容量が限られるため、水分変動が地植えよりも大きい点に留意する。
灌水の適切な時間帯は午前中である。夕方以降に水を与えると夜間に地温が下がり、根の代謝活動が弱まり、根腐れを招きやすくなる。
受け皿に水が溜まった場合は必ず排水する。長時間水が停滞すると、嫌気性菌が増え、根の機能低下の原因となるためである。
連日雨天や降雪が続く場合は灌水を中止し、マルチ下の土壌水分を指で直接確認する。もし葉が一時的に萎れる状態が見られても、土壌が十分湿っている場合は過湿の可能性があるため、追加の水やりは行わず経過観察とする。
排水性を確保するためには、プランターの底にレンガや木材を敷いて地面から浮かせることも有効である。これにより底冷えが軽減され、根圏環境を安定させることができる。
冬に与える肥料のポイント
冬季は低温により植物体の代謝活動が低下し、いちごの生長速度も緩やかになる。このため、施肥方法は生育の停滞を考慮し、過剰施用を避ける形で調整することが求められる。
特に窒素成分は過剰に供給されると、葉が軟弱に伸びやすく、軟弱徒長を引き起こし、結果として病害に対する抵抗性が下がる傾向がある。
農林水産省の資料においても、冬季のいちご栽培では窒素過多が灰色かび病などの発病率上昇に繋がることが報告されている(出典:農林水産省 作物病害防除データベース)
冬の追肥は、基本的に緩効性肥料を少量にとどめることが妥当である。緩効性肥料は土壌中でゆっくりと成分が溶け、植物の吸収ペースに合わせて肥料成分を供給できるため、冬季の代謝が低い時期でも急激な生育変化を招きにくい。
液体肥料を使用する場合は、気温が比較的高い昼間の時間帯に薄めた濃度で与えると吸収効率が安定する。
施肥判断を行う際には、葉色・葉の厚み・節間の長さ・根の状態といった生育指標を丁寧に観察する必要がある。
葉色が濃く柔らかい状態は窒素過多の可能性があり、その場合は追肥を控える。一方、新葉が小さく、葉色が淡い状態が明確な場合は、養分不足が疑われ、少量の追肥が推奨される。
施肥量に迷う場合は、与えない選択が安全性の面では優先される。冬季はいちごが蓄えた根の健全性こそが、春以降の旺盛な新葉展開と花芽形成に直結するためである。
適切な温度管理の目安
いちごは一定期間の低温刺激を受けることで休眠が深まり、その後の日長と温度が高まる時期に生育が再活性化する。
この性質は「低温要求性」と呼ばれ、いちごの花芽分化にも関係している。一般に、いちご栽培における地温は5〜10℃前後を下限の目安とし、これを下回る期間が長いと根の吸収力が低下し、株の回復に時間を要する。
プランター栽培では地温変動が起こりやすく、夜間の放射冷却による急激な温度低下が株のストレスとなることが多い。
これを緩和するために、断熱材、わら、バークチップ、黒マルチなどを株元に施す方法が効果的である。これらの資材は熱移動を穏やかにする働きがあり、根圏の温度安定性に寄与する。
また、強い冷気が滞留しやすい場所は避けることが望ましい。地面の冷気は低所に溜まりやすく、庭やベランダでも位置によって気温差が生じることがある。
壁際や軒下、日当たりの確保できる位置にプランターを移動させるだけでも、地温と株温の安定が図られる。
温湿度管理の目安を数値的に把握するためには温湿度計の設置が効果的である。特に寒波襲来が予測される場合には、夜間最低気温の予測と実測を見比べ、必要に応じて不織布や断熱資材での保護を強化することが推奨される。
いちごのプランター冬越しの管理手順

- 株が枯れるときの原因と対処
- 北海道など雪地域での管理
- わらを使った保温と根の保護
- 葉が黄色くなるときの確認点
- いちごのプランター冬越しのまとめ
株が枯れるときの原因と対処
冬季に株が弱る原因は単一ではなく、複数の環境要因が重なることで発生しやすい。代表的な要因としては、土壌過湿による根傷み、乾燥、寒風による葉の水分喪失、霜柱の上昇による根の浮き上がりなどが挙げられる。
まず確認すべき点は土壌水分と根の状態である。用土が常に湿った状態である場合、根は酸素不足に陥り、根腐れを招く可能性が高くなる。この場合、鉢底石や軽石、排水性の高い用土に部分的に入れ替えることが選択肢となる。また、プランターを地面から少し浮かせることで、底面の通気性と排水性が改善され、過湿が緩和される。
葉やランナーの古い部分は病原菌の潜伏場所となり得るため、晴れた日の午前中に剪定バサミで除去し、切り口が乾くまで過湿を避けることが望ましい。その際、剪定バサミは事前に消毒し、感染経路となるリスクを抑える。
強風にさらされる環境では葉からの蒸散が強まり、低温と組み合わさることで急激な水分喪失に繋がる。風よけや不織布による風圧軽減は、葉の生理的な損傷を防ぎ、株の回復力を支える。
これらの対策により、見た目に衰えがあった場合でも、根の健全性が保たれていれば春に再生させる可能性は十分に残る。
北海道など雪地域での管理
積雪地域におけるプランター栽培は、無積雪地域と異なり、雪が断熱材として機能する一方で、融雪時の過剰水分が根に悪影響を及ぼす点に注意が必要となる。
雪は空気を多く含むため、外気温が極端に低下しても雪下では地温が急激に下がりにくい性質がある。しかし、プランターを直接地面に置いた場合、地中からの冷えを受けやすく、根圏温度の低下が進む可能性がある。
底冷えを防ぐためには、脚付きスタンドやレンガを利用してプランターを地面から浮かせる方法が有効である。これにより底部の通気が確保され、排水性と根の温度安定が改善される。また、軒下や風の影響を受けにくい場所で管理することで、寒風による葉の水分喪失を防ぎやすくなる。
寒波到来が予測される場合は、不織布や発泡シートをプランター全体に重ねて保温層を形成する方法が安定的である。断熱材に使われる発泡シートは、熱伝導を抑えるため、根圏温度を維持するための補助資材として利用されることが多い。特に夜間の気温変動が激しい地域では、保温層を二重にすることで放射冷却の影響を緩和できる。
融雪期には、雪どけ水が鉢内に流れ込まないよう、設置場所を慎重に選ぶ必要がある。鉢内に大量の雪どけ水が侵入すると土壌が長期間湿った状態となり、根腐れを引き起こす可能性が高まる。
早春に日照が確保できる時間帯のみ覆いを外し、昼夜の気温差を緩やかにする換気管理を取り入れると、株体の回復が促進される。
暴風雪が予想される際には、屋内の無加温で明るい場所に一時退避させる選択も有効であり、株にかかる環境ストレスを軽減することが可能となる。
わらを使った保温と根の保護
わらは、いちごの根圏温度を安定させるための保温材として古くから利用されてきた資材である。わらには空隙が多く、空気層を形成することで熱移動を緩やかにし、地温の急激な変化を抑制できる。また、冬季は乾燥により細根が損傷しやすいため、わらによる土壌表面の乾燥抑制効果も重要となる。
わらを敷く際は、株元であるクラウンに過度に触れない厚みで配置することが望ましい。クラウンは生長点を含むため、通気が妨げられ湿度が滞ると病害発生の要因となる。
適量はおおむね2〜4cmの厚さが目安となる。わらが濡れた状態で長期間放置されると、カビや菌類が繁殖しやすくなるため、雨雪により湿った場合は晴天時に一度広げ、乾燥させてから再配置する方法が衛生管理の観点で適している。
わらは軽量のため風に飛ばされやすく、U字ピンや園芸用の押さえピンで数カ所固定することで安定性が確保される。
また、黒マルチやバークチップと併用することで、保温性と雑草抑制効果の両立が図れる。この併用は地温変化の大きいプランター栽培では特に有効で、春先の地温上昇も緩やかに促す。
わらは低コストで再利用しやすく、また化学処理を必要としない資材であることから、家庭菜園でも導入しやすい方法として位置づけられる。
葉が黄色くなるときの確認点

冬季にいちごの葉が黄色くなる現象は、複数の要因が重なって発生することが多い。黄化を正確に判断するためには、新葉が黄化しているのか、古葉が黄化しているのかを区別し、葉脈の色や黄変の広がり方を観察することが重要となる。
低温と日照不足による一時的な葉色の退色は、冬季に多く見られる生理的な変化であり、必ずしも重大な問題を示さない。
一方で、土壌過湿は根の酸素供給不足を引き起こし、根機能が低下することで栄養吸収が滞り、結果として葉が黄化する症状へ発展することがある。まずは土壌水分の確認が最優先となる。
養分要因としては、窒素や鉄の不足が代表的であり、特に鉄欠乏は新葉の葉脈を残して葉全体が黄化する特徴がある。鉄欠乏は土壌pHがアルカリ側に傾いた場合に発生しやすいことが知られている。土壌pHの目安は、簡易土壌測定キットにより確認できる。
古葉の黄変は、生理的な葉の更新過程であることが多く、病斑や灰色かび病の兆候がない場合は衛生管理として除去することで株の通気性が確保される。
黄化の原因を特定する際は、一つの要因に断定せず、土壌水分・日照条件・気温・肥料履歴・pHといった複数の視点から段階的に確認することが効果的である。
いちごのプランターの冬越しのまとめ
- 冬前の資材準備で作業を効率化し寒波にも落ち着いて対応
- 不織布は支柱で空間を作り放射冷却の影響を下げる
- 水やりは朝に土の表面が乾いてからたっぷり与える
- 受け皿は外して滞水を避け根腐れのリスクを下げる
- 冬の追肥は控えめで気温の高い日中に薄めで施す
- 窒素過多を避けて軟弱徒長と病害の誘因を抑える
- 温湿度計で急な昇温と冷え込みを把握して調整する
- 風よけと霜よけを併用して葉とクラウンを守る
- 北海道など積雪地はスタンド活用で底冷えと滞水回避
- 融雪期は雪どけ水の流入を避けて置き場所を調整する
- わらのマルチは根の断熱と乾燥抑制に効果が期待できる
- 病葉や枯葉は晴天時に除去して衛生状態を保つ
- 葉が黄色くなる要因を水分栄養pH日照で順に確認する
- 花が早く咲く場合は株の消耗を避けるため摘み取る
- 日当たりと通気の両立で春の立ち上がりをスムーズにする



