グミの木の実がならないときの原因と対策

被子植物

花は咲くのに実が落ちる、あるいはまったく結実しないときは剪定のやりすぎ、受粉不足、または樹勢が強すぎることが多く原因の見極めが早期回復の鍵となります。

実がなる時期や種類ごとの性質、野生個体との違い、剪定方法や受粉樹の選び方まで整理して解説します。ここを読めば原因の特定と具体的な対策がわかり、収穫につなげやすくなります

「グミの木 実がならない」と検索している方にとって解決できるようにまとめております。

 

実がならない主な原因と見分け方
剪定や肥料で調整する具体策
受粉樹や人工授粉の選び方
病害虫対策と管理の優先順

グミの木の実がならない原因

  • 花が咲いても実らない理由
  • 実がなる時期の目安と管理
  • 種類と美味しい品種の選び方
  • 野生個体との違いと注意点
  • 剪定の基本と方法の考え方

花が咲いても実らない理由

庭や畑でグミの木を育てていて「花は咲いたのに実がならない」と感じるケースは少なくありません。この現象には複数の要因が関わっており、特に受粉の仕組み、剪定の影響、樹勢の状態が重要です。

グミ属(Elaeagnus)の品種には、自家受粉で実をつけるものと、他品種からの花粉を必要とする自家不結実性のものがあります。代表的な例がダイオウグミ(ビックリグミ)で、これは同一品種だけではほとんど結実せず、近くにナツグミなど開花期の合う別品種を植える必要があります。果樹全般においても同様で、リンゴやナシなどと同じく、受粉相手が欠かせないケースがあるのです(出典:農研機構 果樹研究所)

また、開花期に受粉を担う昆虫(ミツバチやマルハナバチなど)が少ない環境では、花粉が十分に運ばれず、結果として実がつかないことがあります。都市部の住宅地やビニールハウス内で特に起こりやすい問題です。この場合は人工授粉が効果的で、柔らかい筆や綿棒で花粉を雌しべに移してやることで着果率を高めることができます。

剪定も見逃せない要因です。グミは前年に形成された枝に花芽をつける傾向があるため、冬場や春先に強い剪定を行うと、翌春の花芽を切り落としてしまうことになります。結果として花は咲いても数が少なく、実りまで至らないことがあります。さらに、窒素肥料を過剰に施すと枝葉ばかりが茂り、養分が果実に回らず幼果が落果してしまうことも知られています。

このように、実がならないときはまず「受粉環境」「剪定履歴」「肥料と樹勢管理」の3点を順番に確認すると、問題の原因を突き止めやすくなります。

実がなる時期の目安と管理

グミの実がいつなるのかを正しく理解することも、管理のポイントです。一般に、植え付けから初めて収穫できるまでには3〜4年程度かかる場合が多いとされています。早ければ2年で実をつける木もありますが、土壌環境や肥培管理によって大きな差が出ます。

開花期は多くの品種で春(4月〜5月)に集中します。その後、受粉がうまくいけば1〜2か月のうちに小さな幼果が見られ、夏から秋にかけて赤く熟していきます。例えばアキグミは秋の9月〜10月頃に収穫期を迎え、ナツグミは7月頃に熟すとされます。ダイオウグミは果実肥大が比較的ゆっくりで、晩夏から秋にかけて収穫が可能です。

ただし、幼果期(開花後すぐの果実形成段階)に実が大量に落ちてしまうことがあります。これを生理落果と呼び、主な原因は養分不足や樹勢のアンバランスです。肥料を与えすぎて樹が過度に勢いづくと、光合成産物が葉や枝の成長に使われてしまい、果実に十分な栄養が行き渡りません。そのため、幼果が小さいうちに自然に落ちてしまうのです。

また、日照条件や排水性も大きく関わります。グミは日当たりの良い環境を好むため、半日陰や湿った土壌では根が健全に働かず、結実が安定しません。土壌改良材をすき込み、排水性を改善するだけでも結実率が上がることがあります。特に粘土質の土壌では、高畝にして水はけを確保する方法が有効です。

種類と美味しい品種の選び方

グミの木を植える目的が「観賞」か「収穫」かによって、選ぶ品種は大きく変わります。収穫を期待するのであれば、果実の味や収量に優れた栽培品種を選ぶことが重要です。近年は果実の大きさや糖度に改良が加えられたものもあり、昔ながらの野生種に比べて食味の点で格段に向上しています。

例えばアキグミは果実が中型で酸味と甘みのバランスがよく、生食のほかジャムや果実酒にも利用できます。栽培しやすく家庭向けに人気の品種です。一方でダイオウグミは果実が大きく見栄えがするため市場価値が高いですが、自家不結実性のため必ず受粉樹が必要になります。受粉樹としてよく組み合わせられるのがナツグミで、こちらは初夏に熟し、生食も可能です。

以下は代表的な品種の比較例です。

品種名 主な特徴 収穫時期 向く用途
アキグミ 栽培しやすく酸味と甘みが調和 生食、ジャム、果実酒
ダイオウグミ 実が大きく存在感があるが受粉管理が必要 晩夏〜秋 加工、生食
ナツグミ 開花が早めで受粉樹として有用 生食、受粉用

複数品種を近くに植えることで、受粉効率が高まり結実が安定するというメリットもあります。特にダイオウグミを栽培する場合は、相性の良い品種を組み合わせることで失敗を防げます。品種選びの段階から収穫の時期や用途を見据え、組み合わせを考えることが家庭果樹栽培の成功の秘訣といえるでしょう。

野生個体との違いと注意点

日本各地には野生のグミが自生しており、アキグミやナツグミ、トウグミなど地域ごとに多様な系統が存在します。野生個体は自然交配の結果、果実の大きさや味、耐病性に幅があり、同じ地域でも個体によって収量や品質に大きな差が見られます。これに対し、栽培品種は長年の育種によって安定した性質を持ち、果実サイズや糖度、収穫時期が一定に保たれています。そのため、家庭で収穫を目的とする場合は、基本的に栽培品種を選ぶ方が確実です。

一方で、野生個体には栽培品種にはない利点もあります。根に共生する放線菌(フランキア属)が空気中の窒素を固定する能力を持っており、痩せ地でも比較的健全に育ちます。農林水産省の研究でも、グミ属はマメ科植物と同様に窒素固定を行う数少ない果樹であることが報告されています(出典:農林水産省 農業環境技術研究所)

ただし、野生個体を庭や果樹園に導入する場合には注意が必要です。まず、果実の品質にバラつきがあり、甘みが少なく渋みが強い個体も少なくありません。また、生長が旺盛で雑木として周囲に広がりやすい性質を持つため、意図せず繁茂して管理が難しくなることもあります。さらに、野生系統は病害虫の宿主となるリスクがあるため、栽培品種との併植時には衛生管理を徹底することが望まれます。

総じて、野生個体は「受粉源の補助」や「生態系の多様性確保」として価値があるものの、収穫を目的とする場合は補助的な役割にとどめ、栽培品種を主体に管理するのが合理的といえるでしょう。

剪定の基本と方法の考え方

グミの木の管理において剪定は欠かせない作業ですが、果実の着果に直結するため特に注意が必要です。グミは前年に伸びた枝に花芽を形成する傾向があるため、誤ってその枝を剪定すると翌年の花や実が減少します。したがって、樹形を整えると同時に花芽を残すバランスが重要です。

剪定の時期は、冬の休眠期から芽吹き前(2月〜3月頃)または開花後の初夏が適しています。冬季に行う場合は、枝の込み合いを解消する間引き剪定を中心に行い、徒長枝(勢いよく伸びすぎた枝)を整理します。開花後に行う場合は、実の生育を妨げないように軽い剪定にとどめます。

若木期は樹勢を高め、枝を充実させることが優先されます。そのため、大きな切り戻しは避け、枝先を軽く整える程度にします。成木になったら、樹冠内部に光が入るように間引きを行い、風通しを良くすることで病害虫の発生を防ぐ効果も期待できます。

樹勢が強すぎる場合、施肥を控えるだけでなく、根の一部を断根する方法もあります。これは根の伸長を抑えて栄養の吸収を調整し、果実への分配を促すための技術です。また、幹の周囲を環状に剥皮する方法もありますが、樹体への負担が大きいため、研究機関や専門農家の指導のもとで慎重に行う必要があります。

剪定は単なる枝の整理ではなく、翌年の収量を左右する重要な作業です。無計画に切るのではなく、花芽の位置や枝の更新サイクルを理解して計画的に行うことが、長期的に安定した結実を得るための基本になります。

グミの木の実がならない対策

  • 受粉樹の選び方と配置
  • 肥料と樹勢管理のポイント
  • 人工授粉の手順とコツ
  • 病害虫対策の基本チェック
  • 【まとめ】グミの木の実がならない

受粉樹の選び方と配置

グミの結実には受粉環境が大きく影響します。特にダイオウグミ(ビックリグミ)は自家不結実性で、同一品種のみではほとんど実をつけません。そのため、受粉樹として開花時期の近い品種を植えることが不可欠です。ナツグミは開花がやや早いものの、環境によってはダイオウグミと花期が重なるため、受粉樹としてよく利用されます。

受粉効率を高めるには、開花期が重なる複数の品種を選ぶだけでなく、植える場所の配置も重要です。風や昆虫が花粉を運びやすいように、5〜10メートル以内に複数本を分散させて植えると効果的です。樹木を一直線に並べるよりも、庭や果樹園内にバランスよく配置した方が、受粉率が向上します。

また、都市部や昆虫の少ない場所では人工授粉の併用が推奨されます。人工授粉は晴天時の午前中に行うと成功率が高く、数日間に分けて繰り返すことで確実性が増します。農業研究分野では、人工授粉を行うことで自家不結実性の品種でも着果率が30〜50%改善するという報告もあります(出典:農研機構 果樹研究所)。

さらに、受粉樹の植栽は長期的な果樹園計画にも関わるため、将来的な樹高や枝張りも考慮する必要があります。大きく育つ品種を狭い間隔で植えると、数年後に枝が競合してしまい、逆に結実が減ることがあります。したがって、受粉効率と管理のしやすさを両立する配置計画が不可欠です。

肥料と樹勢管理のポイント

グミの木は一般的な果樹とはやや異なり、根に共生する放線菌(フランキア属)によって空気中の窒素を固定する能力を持っています。このため、マメ科植物に似た「自ら肥料成分をつくり出す仕組み」を備えており、過度な施肥は不要です。むしろ窒素を与えすぎると樹勢が過剰になり、枝葉ばかりが繁って花や実がつきにくくなることが知られています。特に若木の時期に窒素を大量に施すと、結実が数年遅れる場合もあります。

肥料設計の基本は「控えめで有機質主体」です。収穫後にお礼肥として堆肥や油かすなどを与え、土壌の微生物環境を整えることが望まれます。リン酸やカリは果実肥大や糖度向上に重要な要素ですが、これも過剰になるとバランスを崩すため、土壌分析を行った上で適正量を施すのが理想です。農林水産省が公開している「土壌診断ガイドライン」でも、果樹栽培における土壌分析の重要性が強調されています(出典:農林水産省)

樹勢が強すぎる場合の対策としては、施肥を停止するだけでなく、根元の浅い部分を部分的に断根する方法があります。これは樹の養分吸収力を適度に抑える技術で、専門書でも紹介されている伝統的な手法です。また、石灰資材を散布して土壌のpHを中和すると、根の働きが安定し着果が良くなることもあります。逆に酸性土壌が強すぎると根の機能が低下し、結実不良や病害発生の原因になります。

グミの木は「放置しても育つ」強健さが特徴ですが、安定した収穫を得るためには施肥を最小限にとどめ、樹勢を抑制気味に管理することが大切です。

人工授粉の手順とコツ

近年、都市部や温室栽培など昆虫の訪花が期待できない環境では、人工授粉が実際的な解決策となっています。方法は極めてシンプルで、タイミングと丁寧さが成功の鍵を握ります。

作業は花が7〜8分咲きとなり、花粉が飛散しやすくなった時期に行うのが最も効果的です。晴れた日の午前中は花粉の発芽力が高く、湿度も安定しているため推奨されます。柔らかい筆や綿棒を用いて雄しべの花粉を集め、雌しべの柱頭部分に軽くなぞるように付着させます。強く押し付ける必要はなく、花粉が自然に移動する程度で十分です。

受粉は一度で終わらせず、数日間に分けて2〜3回繰り返すと確実性が増します。これは花の開花が一斉ではなく、順次咲いていくためです。果樹研究分野の報告によれば、人工授粉を併用することで着果率が30〜50%向上した事例も確認されています(出典:農研機構 果樹研究所)

なお、ジベレリンなどの植物成長調整剤を受粉補助に利用する方法も知られています。ただし、使用は農薬登録内容に厳密に従う必要があり、適用外使用は法令違反となります。そのため、必ず農林水産省や各自治体の農薬管理情報を確認してから判断してください。

人工授粉は時間と手間がかかりますが、環境に左右されない確実な方法であり、特に自家不結実性品種や昆虫の少ない地域では非常に有効です。

病害虫対策の基本チェック

グミの木は比較的丈夫な果樹ですが、放置すれば病害虫の影響を受け、結実が不安定になることがあります。早期発見と衛生管理が最も重要な予防策です。

土壌病害の代表例が白紋羽病です。根元に白い菌糸膜が現れ、キノコ臭がする場合はこの病気が疑われます。進行すると根が腐敗し、樹勢が急速に衰えるため、発生した場合は抜根や土壌処分が必要となることがあります。白紋羽病は治療が難しいため、健全苗木の導入や排水改善など、予防が最優先となります。

害虫ではカイガラムシやハマキガ類、幹に穿孔するゴマフボクトウが代表的です。カイガラムシは枝や葉に寄生して樹液を吸い、すす病を誘発することもあります。初期発見時には歯ブラシなどで物理的に除去し、被害が拡大する前に防除するのが基本です。ハマキガ類は葉を巻いて食害するため、食害痕を見つけ次第、被害葉を取り除きます。ゴマフボクトウの幼虫は幹内部を食害するため発見が難しく、樹皮に排出された木屑を見つけることが早期対応の手掛かりとなります。

農薬を使用する場合は、必ず農薬取締法に基づいた登録農薬を選ぶ必要があります。農林水産省の「農薬登録情報検索システム」

また、病害虫発生を未然に防ぐためには、落葉や枯れ枝の処分、樹冠内部の風通し確保、過湿回避といった日常管理が最も有効です。病害虫対策は薬剤に頼るのではなく、まずは栽培環境を整えることから始めるのが基本姿勢といえます。

【まとめ】グミの木の実がならない

  • 花が咲いても受粉不足で実がつかないことがある
  • ダイオウグミは自家不結実性で受粉樹が必要になる場合がある
  • 植え付けから実がなるまでにおおむね三から四年かかる
  • 過度な剪定で花芽を落として結実が減ることがある
  • 樹勢が強すぎると幼果が養分不足で落果しやすくなる
  • 根に共生する細菌で窒素を補う性質があり過肥を避ける
  • 受粉樹は開花期の同期性と虫の動線を考えて配置する
  • 人工授粉は満開期の午前中に数回行うと効果的である
  • 白紋羽病など土壌由来の病気は早期の掘り上げが有効な場合がある
  • カイガラムシやハマキガは早期発見で被害拡大を防げる
  • 若木期は大きな切り戻しを避け株を充実させることが大切
  • 収穫を目的に品種選びで味と結実性のバランスを考慮する
  • 日当たりと排水改善が根域の健康と実付きに直結する
  • 枯死枝や病枝は速やかに処分して感染源を減らす
  • 施肥や薬剤は表示に従って安全に使用することが基本
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