アロエの挿し木水差しで発根させる準備から鉢上げまでの完全手順

多肉植物

アロエの挿し木水差しを試したいものの、挿し穂の選び方や準備する物、切り口の処理が曖昧で不安になる方は多いです。

さらに、根が出るまでの管理では、手順ややり方を間違えるとカビや根腐れにつながりやすく、水換えの頻度や日当たり、温度管理の基準も迷いどころです。

発根後の鉢上げまで見据えるなら、時期の選び方に加え、アロエ・ベラやキダチアロエなど種類別の特徴を踏まえた調整が欠かせません。

メネデールを使う場合の考え方も含め、失敗しやすいポイントを整理して解説します。

 

水差しでの挿し木が失敗しやすい原因と回避策
切り口の処理から根が出るまでの具体的な管理基準
水換え・日当たり・温度管理の最適バランス
種類別の向き不向きと鉢上げまでの移行手順

アロエの挿し木水差しの基礎知識

  • 準備する物と挿し穂手順やり方
  • 切り口の処理とメネデール
  • 挿し木に適した時期と温度管理
  • 根が出るまでの日当たり管理
  • 水換え不足によるカビ対策

準備する物と挿し穂手順やり方

アロエを水差しで増やす工程は、単に水に浸ける作業ではなく、発根に必要な酸素と衛生状態をどう確保するかが核心になります。多肉植物であるアロエは、葉や茎に水分を蓄える構造を持つため、過剰な水分がある環境では根の呼吸が妨げられやすい性質があります。水耕栽培全般において、水温が上がるほど水中に溶け込める酸素量が減少することが知られており、これは農林水産省や大学の水質・水耕研究でも繰り返し指摘されています。
(出典:農林水産省「施設園芸・養液栽培における基礎知識」)

そのため、水差しの成功率は「どの道具を使うか」「挿し穂をどの状態で水に入れるか」に大きく左右されます。

準備する物

透明な容器を使う理由は、見た目の問題ではありません。根の色の変化や、水の濁り、ぬめりの発生を早期に確認できる点が管理上の大きな利点です。容器は深さがあり、挿し穂が安定して立つものが適しています。

  • 清潔なカッターまたは剪定ばさみ
    使用前にアルコールや火で消毒することで、切断面から侵入する雑菌を抑えます。
  • 透明なガラス容器やプラスチック容器
    根や水質の異変を視認できる形状が望ましいです。

  • 水道水を使用する場合、塩素が気になる地域では一晩汲み置きすることで刺激を弱められます。
  • 固定用の支え
    割り箸やクリップなどを使い、挿し穂が水中で揺れないようにします。
  • メネデール
    必須ではありませんが、発根を補助したい場合に選択肢となります。

挿し穂の作り方の考え方

水差しでは、切断面が長時間水に触れ続けます。切り口が乾いていない状態では、細胞から流出した養分をエサに雑菌が繁殖しやすく、腐敗やカビの原因になります。この点については、園芸用肥料メーカーの公式ガイドでも、挿し木前に切り口を乾燥させる重要性が明記されています。
(出典:株式会社ハイポネックスジャパン「挿し木・挿し芽の基本」)

基本的な手順は以下の流れです。

  1. 病斑や変色のない、張りのある部位を選び、消毒した刃物で切断
  2. 切り口を風通しの良い日陰で乾燥させ、傷口を安定させる
  3. 水位を低めに設定し、切り口が完全に沈まない状態で管理
  4. 発根が確認できたら、水位と水換え頻度を調整
  5. 根が十分に伸びた段階で鉢上げに移行

この工程を丁寧に踏むことで、腐敗やカビの発生リスクを大幅に抑えられます。

切り口の処理とメネデール

水差しにおいて最も失敗と成功を分ける要素が、切り口の処理です。アロエは多肉植物の中でも比較的丈夫とされていますが、切断直後の組織は非常にデリケートな状態にあります。切り口が湿ったままだと、空気中や水中の微生物が侵入しやすくなり、結果として腐敗や発根不良を招きます。

切り口の処理の基本

切り口を乾燥させる理由は、傷口をコルク化させ、病原菌の侵入を防ぐためです。乾燥期間は気温や湿度によって前後しますが、数日から長い場合で1週間程度が目安とされています。特に切断面が広い場合は、内部まで十分に乾燥させることが重要です。
(出典:株式会社ハイポネックスジャパン「多肉植物の増やし方」)

管理時のポイントは次の通りです。

  • 直射日光を避け、明るい日陰で乾かす
  • 高湿度環境を避け、風通しを確保する
  • 切り口がべたつかず、触っても湿り気を感じない状態を確認してから水へ移す

メネデールの使いどころ

メネデールは肥料ではなく、鉄イオンを補給することで植物の代謝や発根を助ける資材として位置付けられています。水差しで使用する場合、濃度管理が重要で、園芸専門誌などでは50〜200倍希釈が紹介されることがあります。
(出典:NHK出版「趣味の園芸」公式解説)

一方、メーカー公式サイトでは製品や用途によって500〜1000倍希釈が示されている場合もあり、必ず製品ラベルの指示を優先する必要があります。
(出典:株式会社メネデール 公式サイト)

いずれの場合も、切り口の乾燥工程を省略してメネデールだけで補おうとするのは適切ではありません。乾燥不足は、発根遅延や腐敗の直接的な原因になることが、多くの園芸資料で共通して指摘されています。

挿し木に適した時期と温度管理

アロエの挿し木は、植物が活動的な生育期に行うことで成功率が高まります。園芸メーカーや研究機関の情報では、春から秋にかけて、特に3〜9月が適期とされています。
(出典:株式会社ハイポネックスジャパン「アロエの育て方」)

キダチアロエについても、5〜9月頃が増やしやすい時期として紹介されており、気温が安定して高いほど発根が進みやすい傾向があります。
(出典:カインズ 園芸コラム)

温度管理で意識したいポイント

水差しでは、根が直接水に触れるため、水温の影響を強く受けます。農家向けの水耕栽培資料では、水温が高くなると溶存酸素量が低下し、根腐れが起こりやすくなることが明示されています。
(出典:農家web「水耕栽培の基礎知識」)

一方、低温期は植物の代謝が低下し、発根に必要なエネルギー供給が滞ります。そのため、冬季に無理に水差しを行うよりも、適期まで待つ判断が安定した結果につながります。

実務的な温度管理の考え方は以下の通りです。

  • 春から初夏、または秋口の穏やかな気温を選ぶ
  • 真夏は直射日光を避け、水温上昇を防ぐ
  • 冬は発根を目的とした水差しは控え、時期をずらす

これらを踏まえることで、根への負担を抑えつつ、発根しやすい環境を整えられます。

根が出るまでの日当たり管理

水差しで発根させる工程では、日当たりの与え方が「光合成の量」だけでなく「水温」と「水の傷みやすさ」に直結します。特に透明容器は、根の状態を観察しやすい反面、日光が当たると水温が上がりやすく、藻が増えたり水が傷みやすくなるデメリットも抱えます。水温が上がるほど水中の溶存酸素量は減るため、根が呼吸しづらくなり、根腐れのリスクが上がる点を先に理解しておくと管理の判断がぶれにくくなります。
(出典:USGS Water Science School Dissolved Oxygen and Water)

置き場所の目安

  • 明るい日陰、レースカーテン越しの窓辺
  • 風が動く場所(蒸れが減る)
  • 真夏のベランダ直射は避ける

この方針が有効なのは、根が出るまでの挿し穂は「根がないのに蒸散だけは起きる」状態になりやすいからです。強すぎる日差しは蒸散を促し、挿し穂の水分収支を崩しやすくなります。一方で暗すぎる場所は光合成が落ち、切り口の治癒や発根に必要なエネルギーが不足しがちです。したがって、直射日光を避けつつ、十分に明るい場所で安定させるのが現実的です。

アロエベラの一般的な生育条件としては、明るい光を好み、日照条件によっては半日陰にも適応するとされます。屋外へ出す場合は雨を避け、室内管理では明るい窓辺で育てるとよい、という方向性が植物園の解説でも示されています。
(出典:Missouri Botanical Garden Plant Finder Aloe vera)

水位の考え方

水位が高すぎると酸素不足になりやすいので、根がまだない段階では切り口を水に沈めすぎないほうが安全です。根が伸びてきた後も、根の半分〜3分の2が浸かる程度に抑え、根元側を空気に触れさせる考え方が示されています。

この考え方の背景には、根が酸素を必要とするという基本があります。水に完全に沈めるほど酸素の供給は制限され、特に水温が高い時期は溶存酸素そのものが少なくなるため、酸欠に拍車がかかります。USGSやEPAが示す通り、温度は溶存酸素の溶け込みやすさに影響します。
(出典:USGS Water Science School Dissolved Oxygen and Water)

次の表は、水差しの進行段階ごとの水位設計の目安です。

段階 水位の目安 狙い
開始直後 切り口が水面ギリギリに触れる程度 腐敗と酸欠を避ける
発根が見え始めたら 根の一部が水に浸かる程度 根を伸ばしつつ酸素確保
根が増えたら 根の半分〜3分の2を水に 吸水と酸素の両立

表の通り、開始直後は水位を上げない設計が合理的です。根が出る前に切り口を深く沈めると、傷口がふやけるだけでなく、微生物が繁殖しやすい環境にもなります。発根を確認できたら徐々に根を水に触れさせ、根が増えた時点で吸水量と酸素確保のバランスを取るのが管理の筋道です。

水換え不足によるカビ対策

水差しで起こるトラブルの代表が、カビ、ぬめり、異臭、根の黒変です。これらは単独の原因で起こるというより、水の汚れと酸素不足が重なって発生することが多いです。さらに、温度が高いほど水中の溶存酸素が減り、微生物の活動が活発になるため、夏は条件が悪化しやすくなります。温度が溶存酸素に影響することは、公的機関の水質解説でも明確に示されています。
(出典:USGS Water Science School Dissolved Oxygen and Water)

水換えの基準

水換えの頻度は環境で変わりますが、目安として週1回、濁ったら交換という考え方が示されています。
ただし水差しの初期は切り口が不安定なので、より短い間隔で水を新しくするほうがトラブルを減らしやすいです。一般的な水挿しでは2〜3日に1回の水替えが推奨されるケースもあります。

ここで意識したいのは、水換えの目的が「水を新しくする」だけではなく、「酸素が少ない環境をリセットする」ことにもある点です。水は時間が経つほど微生物や有機物が増え、溶存酸素が消費されやすくなります。さらに、透明容器は藻が増えやすく、藻の増殖と分解が進むと酸素が消費され、水が傷みやすくなります。したがって、頻度を固定するよりも、次の観察項目をトリガーに交換するほうが現実的です。

  • 水が白く濁る、糸状の浮遊物が出る
  • 容器内側がぬめる
  • 水面や切り口周辺に白い膜が出る
  • 臭いが出る

これらが出たら、予定日を待たずに交換して構いません。水換えの手間を減らしたい場合は、容器を小さめにしすぎず、直射日光を避けて水温上昇を抑えると、交換間隔を延ばしやすくなります。

カビが出たときの対処

カビやぬめりが出た場合は、放置して自然回復するよりも、衛生状態の立て直しが先です。

  • 容器を洗い、可能なら熱湯消毒やアルコール消毒を行う
  • 挿し穂の水に触れる位置を少し上げ、水位を下げる
  • 切り口に異変があれば、いったん取り出して再乾燥も検討する

このとき、切り口の状態確認が非常に大切です。切り口が柔らかい、ぬるつく、変色が進んでいる場合は、腐敗が進行している可能性があります。多肉の増殖に関する大学エクステンションの解説では、切断面を乾かしてコルク化させることで腐敗しにくくなる、といった趣旨の説明があり、乾燥工程を省略しないことが基本になります。
(出典:Michigan State University Extension Secrets to success when propagating succulent plants)

また、そもそも多肉植物は水の中で発根させる方法に向きにくい、とする大学のガイドもあります。水差しは根を確認しやすい利点がある一方、腐敗リスクを抱えやすい方法であることを理解し、発根したら長期間水に置かず鉢上げへ移す設計にすると、トラブルを抑えやすくなります。
(出典:Iowa State University Extension How to Propagate Succulents)

アロエの挿し木水差しの種類別ポイント

 

  • 種類別キダチアロエとアロエ・ベラ
  • 千代田錦と鬼切丸とアロエ‘クリスマス・キャロル’
  • アロエ・ディスコイングシーとプリカティリス
  • アロエ・エリナケアとアレニコラ
  • アロエ・カスティロニアエとスプラフォリアータ
  • アロエの挿し木水差し後の鉢上げ

種類別キダチアロエとアロエ・ベラ

水差しのやり方は共通していても、アロエの種類によって発根スピードや腐敗リスクは変わります。ポイントは、種類の名前よりも、形態と生育特性に合わせて「水差しの期間をどれくらい短くするか」「乾燥工程をどれだけ丁寧にするか」を決めることです。ここでは、流通が多く、検索ニーズも高いキダチアロエとアロエ・ベラを中心に考え方を整理します。

キダチアロエ

キダチアロエは茎立ちしやすく、仕立て直しや下葉整理の際に挿し穂を得やすいタイプです。茎がある分、切断面が葉単体よりも大きくなる場合があり、切り口の乾燥を丁寧に取る価値が高い部類です。

多肉植物の繁殖に関する大学・園芸機関のガイドでは、切断面を数日乾かしてコルク化させ、腐敗を避けてから用土へ挿す方法が推奨されています。
(出典:Royal Horticultural Society How to grow houseplant cacti and succulents)

この考え方を水差しに応用する場合、切り口を長時間水に浸ける設計は相性がよくありません。根が出る前は水位を低くし、発根を確認したら早めに鉢上げへ切り替えると、過湿によるトラブルを避けやすくなります。

アロエ・ベラ

アロエ・ベラはロゼット状で、葉に貯水組織を持ちます。そのため短期的には根が少なくても耐えやすい一方、過湿環境が続くと根が呼吸しづらくなり、根腐れへ移行しやすい点は他の多肉と同様です。アロエ・ベラの栽培条件として、明るい光と水はけのよい用土、控えめな水やりが適することは植物園の解説でも触れられています。
(出典:Missouri Botanical Garden Plant Finder Aloe vera)

さらに、温度面ではアロエ・ベラは低温に弱く、冬の最低温度に注意が必要とされています。植物園の解説では、夏の夜間は50〜60°F程度を許容し、冬は最低40°F程度という目安が示されています。日本の住環境に当てはめる場合、冬の窓際の冷え込みや水温低下が発根停滞につながりやすいため、水差しの開始時期は春から秋が無難です。
(出典:Missouri Botanical Garden Plant Finder Aloe vera)

水差し運用の現場では、アロエ・ベラは「水差しで増やし続ける」のではなく、「発根確認のために短期で使い、鉢上げで安定させる」という位置づけにすると管理が楽になります。水に置く期間を短くできれば、溶存酸素不足や水の不衛生化で根が傷むリスクも抑えられます。溶存酸素が温度の影響を受ける点はUSGS・EPAの解説が根拠になります。
(出典:USGS Water Science School Dissolved Oxygen and Water)

千代田錦と鬼切丸とアロエ‘クリスマス・キャロル’

このセクションで扱うアロエは、いずれも比較的コンパクトなサイズ、もしくは交配由来の装飾性が高いタイプです。共通して言えるのは、水差しは長期管理の手段ではなく、発根を確認するための補助的な工程として位置づけたほうが安定しやすい点です。多肉植物全般について、大学のエクステンション資料では「水分過多は腐敗の最大要因」と繰り返し指摘されており、小型種ほど影響が顕著になります。
(出典:University of Illinois Extension Propagating succulents and cacti)

千代田錦

千代田錦は、縞模様の葉が特徴的な小型アロエで、乾燥に強い一方、過湿には弱い傾向があります。植物データベースや多肉植物の専門資料では、乾いた環境であれば比較的低温にも耐える性質があると紹介されています。
(出典:Royal Horticultural Society Aloe variegata profile)

この性質を踏まえると、水差しでは次の点が管理の軸になります。

  • 切り口は十分に乾燥させる
  • 水位は低く保ち、根が出たら早めに鉢上げ
  • 発根後も水中で維持し続けない

小型種は体積に対して切断面の割合が大きくなりやすく、水中に置く時間が長いほど腐敗リスクが高まります。水差しは発根確認までに留める設計が、結果として失敗を減らします。

鬼切丸

鬼切丸は園芸流通名として扱われることが多く、同じ名前でも形態が異なる個体が存在します。この場合、品種名に頼るよりも、葉の厚み、ロゼットの詰まり具合、根元の蒸れやすさといった形態的特徴で管理方針を決めるほうが合理的です。

大学や園芸団体の多肉繁殖ガイドでは、小型で葉が密なタイプほど、空気の流れと乾湿のメリハリが重要になるとされています。
(出典:Michigan State University Extension Secrets to success when propagating succulent plants)

鬼切丸のようなタイプでは、水差し期間を短く設定し、白い根が数本確認できた段階で鉢上げへ移すことで、根腐れのリスクを抑えやすくなります。

アロエ‘クリスマス・キャロル’

アロエ‘クリスマス・キャロル’は、赤みを帯びた葉色や模様が特徴の交配種で、観賞価値の高さから人気があります。栽培目安としては、最低温度を5℃以上に保つとよいとされており、低温期の水管理には注意が必要です。
(出典:Royal Horticultural Society Aloe hybrid cultivation notes)

水差しを冬に行うと、水温が下がりやすく、溶存酸素の問題以前に代謝が落ちて発根が進まないケースがあります。USGSやEPAの資料が示すように、水温は酸素溶解度にも影響しますが、植物側の生理反応も温度に左右されます。
(出典:USGS Water Science School Dissolved Oxygen and Water)

そのため、このタイプは暖かい時期に短期間で発根させ、用土管理へ移行する運用が現実的です。

アロエ・ディスコイングシーとプリカティリス

この2種は、一般的な園芸店ではあまり見かけない原種寄りのアロエとして扱われることが多く、環境適応の幅が狭いケースもあります。その分、水差しの設計を誤るとダメージが表面化しやすいため、基本原則に忠実な管理が求められます。

アロエ・ディスコイングシー

ディスコイングシーは流通量が少なく、詳細な栽培データが限られています。このような場合、「原種アロエは過湿を嫌うことが多い」という一般原則を軸に管理するのが安全です。大学エクステンションの多肉植物資料では、原種系ほど乾燥寄りの管理が推奨される傾向が示されています。
(出典:University of California Agriculture and Natural Resources Growing succulents)

水差しでは、以下の点を優先するとトラブルを抑えやすくなります。

  • 水位を極力低く保つ
  • 水換えをこまめに行い、水の劣化を防ぐ
  • 発根確認後は速やかに土へ移す

水中での長期管理は、原種系にとって本来の生育環境とかけ離れているため、必要最小限に留める判断が合理的です。

アロエ・プリカティリス

プリカティリスは、扇状に葉が展開する独特の姿を持ち、成長すると幹立ちする大型アロエとして知られています。植物園の解説では、成長すると高さが出るため、根元の通気性と乾燥が重要とされています。
(出典:Royal Horticultural Society Aloe plicatilis profile)

大型種は切断面が広くなりやすく、乾燥不足が腐敗に直結します。水差しに移行する前の乾燥工程を丁寧に行い、水位を浅く保ったまま短期間で発根させ、その後は水はけのよい用土で管理する流れが適しています。

アロエ・エリナケアとアレニコラ

アロエ・エリナケアとアレニコラはいずれも原種アロエとして扱われ、環境が合ったときの姿は魅力的ですが、一般的な観葉植物よりも水分管理の幅が狭い傾向があります。多肉植物の研究や園芸指導では、原種系ほど「水のやりすぎ」が失敗原因になりやすいとされています。
(出典:Iowa State University Extension How to Propagate Succulents)

水差しは、発根の有無を確認できる点では有効ですが、維持栽培の方法としては適していません。そのため、次のような位置づけで使うと管理が整理しやすくなります。

  • 水差しは発根確認までの短期工程
  • 水は濁りや臭いが出る前に交換
  • 直射日光を避け、水温上昇を防ぐ

透明容器は便利ですが、藻の発生や水温上昇の原因にもなります。WOOTANGなどの水耕栽培ブランドや大学資料でも、直射日光を避ける管理が推奨されています。
(出典:WOOTANG Indoor Hydroponics Guide)

原種系は、鉢上げ後に水はけのよい用土と風通しを確保し、乾燥気味に育てることで安定しやすくなります。

アロエ・カスティロニアエとスプラフォリアータ

アロエ・カスティロニアエ

カスティロニアエも流通量が限られており、詳細な育成データが少ない部類です。このような場合は、品種固有の細部にこだわるより、多肉植物共通の管理原則に沿うほうが安全です。特に水差しでは、根の酸欠を避ける水位設計と、定期的な水換えが管理の柱になります。

水耕栽培における根腐れの要因として、酸欠、高水温、水の不衛生化が挙げられる点は、農業技術資料でも整理されています。
(出典:農林水産省 養液栽培の基礎)

アロエ・スプラフォリアータ

スプラフォリアータは、互生して折り重なるような葉姿が特徴とされ、立体的な形状を持ちます。この構造は見た目の魅力になる一方、株元に湿気がこもりやすいという管理上の注意点にもつながります。
(出典:Royal Horticultural Society Aloe profile)

水差し中も鉢上げ後も、風通しを確保し、乾湿のメリハリをつけることで、蒸れや腐敗を避けやすくなります。置き場所や水位の調整は、形態に応じて柔軟に見直すことが大切です。

アロエの挿し木水差し後の鉢上げ

水差しで発根を確認できた後の鉢上げは、アロエの生育を安定させるうえで重要な分岐点になります。水中で形成された根は、土中の環境とは性質が異なり、長期間そのまま維持すると根腐れのリスクが高まることが知られています。養液栽培や水耕栽培の基礎資料では、根腐れの主因として酸欠、高水温、水の不衛生化が整理されており、これはアロエの水差し管理にも当てはまります。
(出典:農林水産省「養液栽培の基礎知識」)

そのため、水差しはあくまで発根を確認するための一時的な工程と捉え、適切なタイミングで鉢上げへ移行することが、結果的に失敗を減らす近道になります。

鉢上げのタイミングの考え方

鉢上げを急ぎすぎると根が十分に機能せず、逆に遅らせすぎると水中環境に適応した根が傷みやすくなります。判断の目安として、次の条件がそろっているかを確認します。

  • 白く張りのある根が複数本確認できる
  • 根が黒ずんだり、ぬめったりしていない
  • 切り口周辺に異臭や柔らかさが見られない
  • 気温が安定しており、植え替えのストレスが小さい時期

特に根の色と質感は重要です。健全な根は白色から淡黄色で、触ると弾力があります。変色や異臭がある場合は、鉢上げ前に切り戻しや再乾燥を検討したほうが安全です。

用土と鉢の選び方

鉢上げに使う用土は、水はけのよい多肉植物用培養土が基本になります。大学の園芸エクステンションや植物園の解説では、アロエは過湿を嫌い、排水性の高い土壌を好むとされています。
(出典:Missouri Botanical Garden Plant Finder Aloe vera)

鉢は底穴のあるものを選び、最初から大きすぎるサイズは避けます。根量に対して鉢が過剰に大きいと、土が乾きにくくなり、過湿の原因になります。

鉢上げの具体的な手順

鉢上げ作業では、根と切り口をできるだけ傷めないよう、落ち着いた手順で進めます。

  1. 水差しから挿し穂を取り出し、根についた汚れやぬめりを軽く洗い流す
  2. 風通しの良い日陰で半日から1日ほど置き、根と切り口を落ち着かせる
  3. 乾いた用土に植え付け、根を無理に広げすぎない
  4. 植え付け直後は水を与えず、数日から1週間ほど様子を見る
  5. 株が不安定な場合は支柱などで軽く固定する

この流れは、多肉植物の繁殖に関する大学資料でも推奨されている「乾燥→定着→徐々に給水」という考え方に沿っています。
(出典:University of Illinois Extension Propagating succulents and cacti)

鉢上げ後の管理と注意点

鉢上げ直後のアロエは、根を増やすことにエネルギーを使う段階にあります。この時期に強い直射日光や多量の水を与えると、葉焼けや根腐れにつながりやすくなります。

管理の基本は次の通りです。

  • 明るい日陰からスタートし、徐々に日当たりに慣らす
  • 用土が完全に乾いてから少量ずつ水を与える
  • 高温期は風通しを確保し、蒸れを防ぐ

アロエは乾燥に強い反面、過湿には弱いという性質があります。水差しから土耕へ移行した直後は特にこの性質が表れやすいため、「水を与えない勇気」を持つことが管理の安定につながります。

水差しで発根させる工程は便利ですが、最終的な目的は土で健全に育てることです。鉢上げまでを一連の流れとして設計することで、アロエの挿し木と水差しを安全かつ再現性の高い方法として活用できます。

アロエの挿し木水差し後の鉢上げ

  • 切り口は乾燥させてから水差しへ進める
  • 透明容器は根の観察に向き異変も見つけやすい
  • 水位は浅めから始め酸欠と腐敗を回避する
  • 根が増えたら根の半分から三分の二を浸す
  • 水換えは週一を目安に濁りがあれば即交換
  • 初期は二〜三日に一度の水替えが安定しやすい
  • 直射日光は避け明るい日陰で水温上昇を抑える
  • 真夏は高水温で根腐れが起こりやすく注意する
  • 生育期の三〜九月頃に始めると発根が進みやすい
  • キダチアロエは過湿を避ける管理が合いやすい
  • アロエ・ベラは水位管理と酸素確保がポイントになる
  • 千代田錦など小型種は水差し期間を短めにする
  • クリスマスキャロルは低温期を避け短期発根が向く
  • プリカティリスなど大型種は切り口乾燥を丁寧に行う
  • 発根後は鉢上げして水はけのよい用土で安定させる
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